籠の中のジョニー

若輩者のプロフィールのような文章

ドカベンの話

巷ではアベンジャーズなるものがたくさんの人々を魅了していると聞くが、私の映画に対するハードルが異常に高すぎるためまだまだ手を出さずにいる。ハリーポッターは最終作を残しているままで、他のシリーズものスターウォーズやらロードオブザリングやら全部観ていない。洋画なんかは映画のハードルが棒高飛びくらいに感じるためおそらくこれから先も観ないであろう。

 

ただ話を合わせることに関しての意欲は人一倍あるため、話題のものの基本情報を調べることには余念がない。アベンジャーズは聞くところによると、複数のマーベルの映画のキャラクターからなる作品であることを知った。

知った時に自分の頭に浮かんだものといえば、幼少期から読んでいた「ドカベン」であった。

 

私とドカベンの出会いは、小学校三年生のときの夏休み。友達と遊ぶ約束などせずに、毎日家の近所に住む幼馴染がうちに来てはゲームや外で野球をして遊んでいた。そんな幼馴染が長期間旅行に行くことになり、携帯で連絡を取り合うような時代でもないので他の友達と前の日に遊ぶことを約束してるわけでもない中でポカンと暇を持て余した。

 

昼間に家で寝て過ごす夏休みで一階で少し涼しかった親の寝室に入ると本棚があった。そこにある本は「美味しんぼ」「クッキングパパ」「島耕作」「柔道部物語」「ゴルゴ13」などおおよそ小学生が読むようなものはなく、小学校に上がる前に引っ越した当初から本があることはわかってはいたが、つまらない部屋だと思っていたが、日々の暇さから「ドカベン」を手にとって読んでみた。その頃から少年野球チームには入ってはいないが野球は好きで、父親がなんとなく野球漫画を読んでいるという意識はあったので、当時から見ても古臭い言葉や言い回しの多いドカベンを意を決して、1巻から読んでみた。

すると言葉遣いの読みにくさに加えて大好きな野球に関することが3巻まで読んでも出てこない。家にあったのは文庫版であり単行本の約1.5倍の厚さがあるにもかかわらず4巻まで出てこないとなると、単行本ではもっと野球にたどり着くのに巻数を要したことになり、当時の漫画のガバガバさに幼いながら面白みを感じた。

 

私が読んでいるのを横目で見ていた年の近い兄も読むようになり、最後まで読み終わったことを父親に話すと、そのドカベンの続きがあることを言われた。たしかに高校野球の3年の夏の大会を残して終わっているのに違和感を感じていた。そこから父親とのドカベンを集める長い旅がゆるくはじまった。

シリーズとして「ドカベン」の他に続きから、「大甲子園」、「プロ野球編」、そして当時連載中だった「スーパースターズ編」の他に、のちに連載が始まる「ドリームトーナメント編」があり、昨年に連載終了し累計205巻まで出たらしい。

父親もお小遣い制で大人買いなんて以ての外のため、近所の古本屋で少しづつ買い足していった。当時はネットで買ったり、在庫の情報もいかなきゃわからない中で最後の方は止むを得ず新品を取り寄せたりして揃えていったが、発売から十数年たったものも多く、多分全部揃うまでに4.5年はかかったと思われる。

 

そんな中で「大甲子園」からは作者の水島新司先生の他の作品から、主人公の山田太郎擁する明訓高校がその他の作品の主人公擁する高校と対戦する夢の対決が実現する。「球道くん」「ダントツ」「一球さん」「野球狂の詩」など流石に水島新司作品をすべて揃えていく気力はなかったが、古本屋で立ち読みしたり、漫画喫茶で全部頭に入れるかのごとく必死になって読んだりしていた。

 

プロ野球編」では、それまでドカベンに出てきた、同じ高校の仲間や対戦相手を12球団に散りばめて現役のプロ野球選手も含めての対決が描かれるのにこれまた興奮した。特に、入団した1995年から2003年にかけての連載により当時現役スター選手との対戦が細かく描かれてる。

 

「スーパースターズ編」では、当時の現実でもあった、「球団再編問題」と主人公たちのFA権取得によりパ・リーグに2球団増やすことで、主人公山田太郎擁する明訓高校のメンバーとそれ以外のチームを分けてペナントレースを描く作品となっている。それまでは各球団のドカベンのキャラクター+現役プロ野球選手のチーム対山田太郎の西武の話が主だったが、完全にドカベンのキャラクターのチーム対純正のプロ球団(たまにプロ野球編で途中から出てきたキャラクターも残っている)の話になっている。

 

「ドリームトーナメント編」では、「スーパースターズ編」でのパ・リーグ8、セ・リーグ6のところセ・リーグに2球団足して、セパ16球団の中で、ドリームトーナメントを開催するというコンセプトで連載がはじまった。

しかし私自身が高校大学と他のことに時間を費やしており、10巻までで単行本を買うことをしなくなってしまった。とても面白いだろうという作品であったが、トーナメント終了と同時に終わりが見えてしまったドカベンに一抹の寂しさから意識が遠のいていった。

 

昨年の連載終了のニュースを聞いて「やっぱりなと」いう気持ちと、作者の水島新司先生に「お疲れ様でした」という感想でいっぱいであった。

そして連載終了を聞いてまた読みたくなった頃に焦らずに読んでいこうと思った。

ドカベンは、観たことはないがアベンジャーズさながらたくさんのキャラクター水島新司先生の他の作品から集結させ、それぞれの物語を持って主人公山田太郎に挑む、もしくは一緒に戦うといった、野球を通して46年の歴史の分の深みのある作品であることは間違いない。

同世代でこの話をできる人は少ないが、より多くの人に素晴らしさを伝えたいと思いをアベンジャーズで思い出した次第である。